医療福祉の税務情報
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文書作成日:2026/08/15
変わる「年収の壁」とパート職員の働き方

人手不足が続く医療機関や福祉施設では、パート職員の働き方が事業運営に大きく影響します。
そのなかで、配偶者がいる職員から相談を受けることが多いのが「年収の壁」です。かつては「103万円の壁」が働き方を考える際の代表的な目安でした。しかし、度重なる税制改正により所得税の課税ラインが引き上げられたことで、住民税や社会保険との基準の違いが以前より大きくなっています。
そのため、現在は「所得税がかからない範囲」を目安に働き方を判断することは難しくなっています。そこで今回は、配偶者がいるパート職員について、収入が給与のみの場合を前提に、最新の年収の壁について解説します。

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本人の収入に影響する3つの年収の壁
@ 119万円の壁(住民税)

 住民税は所得税とは基準が異なります。
 給与収入のみの場合、住民税が課税されない上限は、おおむね年収119万円とされています。
 そのため、所得税はかからなくても住民税が発生するケースがあります。
 「税金がかかるかどうか」を考える際には、所得税と住民税がそれぞれ別の基準で判定されることを、これまで以上に理解しておく必要があります。

A 130万円の壁(社会保険)

 多くの方にとって最も影響が大きいのが社会保険の壁です。
 配偶者の社会保険の扶養となっている方は、年収130万円以上になると、その扶養から外れる可能性があります。
 扶養から外れると、自身で健康保険料や年金保険料を負担することになるため、税金以上に家計への影響が大きくなることもあります。
 そのため、働き方を考える際には、住民税や所得税よりも社会保険への影響を重視する方も少なくありません。

B 178万円の壁(所得税)

 2026年からは、年収178万円以下であれば所得税は課税されません。
 以前は「103万円の壁」、その後は「123万円の壁」が注目されましたが、所得税の課税ラインはさらに引き上げられました。
 そのため、所得税だけを理由に就業調整を行う必要性は、以前より小さくなっています。

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配偶者がいる場合は世帯収入への影響にも注意

 年収の壁を考える際には、本人だけでなく世帯全体への影響も確認する必要があります。
 特に配偶者がいるパート職員は、配偶者の扶養の範囲で働く方も多くいます。
 この場合、パート職員本人の収入に応じて、配偶者が受けられる配偶者控除や配偶者特別控除の額が変わります。
 具体的には、パート職員の収入が136万円までは配偶者控除の対象となり、これを超えると配偶者特別控除へ移行します。その後、169万円までは配偶者特別控除を満額受けることができますが、169万円を超えると収入の増加に応じて控除額が段階的に縮小し、207万円を超えると適用を受けることができません。
 そのため、「本人の税金が増えるかどうか」だけではなく、「世帯全体の手取りがどう変わるか」という視点で検討することが重要です。

3
配偶者手当にも注意

 見落としがちなのが、企業独自の配偶者手当や家族手当です。
 配偶者が勤務先からこれらの手当を受けている場合は、支給要件を確認しておく必要があります。
 税制改正によって税法上の基準が変わっても、企業の手当の支給基準が自動的に変更されるわけではありません。
 収入を増やした結果、手当の支給対象から外れ、想定していたほど世帯収入が増えなかったというケースも考えられます。

 このように、それぞれ異なる基準が存在するため、職員によって重視するポイントも異なります。税負担を気にする方もいれば、社会保険の扶養を優先する方、配偶者手当への影響を重視する方もいます。

 医療機関や福祉施設の経営者としては、一人ひとりの事情を把握しながら柔軟に働き方を提案することが、職員の定着や人材確保につながるでしょう。

 職員から相談を受けた際には、「どの壁を意識しているのか」を確認し、世帯全体への影響も踏まえて対応することが大切です。

 制度への理解を深め、職員一人ひとりに合った働き方を支援していきましょう。

[参考]
国税庁HP
令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし PDF

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